アルコール依存、ギャンブル依存の治療の流れを解説します【精神科医が一般の方向けに病気や治療を解説するCh】

00:00 今日のテーマ
01:29 アルコール依存症:初期
05:32 アルコール依存症:中期
07:44 アルコール依存症:後期
09:00 コロナの影響下でも飲み歩いてしまう

前回の発達障害の説明と同じホワイトボードを使って「依存症の治療」について解説してみようと思います。

僕のクリニックだと依存症の患者さんは5%未満です。1日の患者さんが40〜50人なので、1日に2、3人です。軽い方だけ診ているという感じですが、依存症治療についてどのようなことを考えているかを説明しようと思います。

<アルコール依存症:前期>

・診断、検査
アルコール依存症の場合、診断は結構簡単で早い段階でわかります。
検査は肝機能など内科的な検査が重要です。これは内科でやってもらいます。エコーも当ててもらい、肝硬変など起きていないか検査します。

・疾患教育
疾患教育はすごく重要です。自分でできる方は本を読んで勉強してもらう必要があるし、自分でできない方であれば依存症専門の病院のデイケアプログラムを受ける必要があります。デイケアにも行けないのであれば、入院をして半強制的な治療プログラムを受けるのが良いです。

ただこれもなかなか難しく、本を読んでくださいと言ってもなかなか読めないですし、それはやる気だけの問題ではなくベースにある知的な問題やアルコールによって認知が歪められているためでもあります。

・薬の検討
それから薬の検討をします。アルコール依存であればノックビンなどの断酒薬を使うか使わないか、レグテクトを使うか使わないか、睡眠薬を使うか使わないかを検討します。

睡眠薬についてはベンゾジアゼピン系なのでそちらの依存を生むのではないかと危惧する方も多いのですが、毒をもって毒を制すではありませんが、僕は結構ベンゾ系の睡眠薬を使ってでもお酒をやめてもらうようにします。ただ、人によってはお酒をやめられず、お酒と睡眠薬を一緒に飲んでしまうというダブル依存になってしまう人いるので要検討です。

また、ベンゾ系以外の睡眠薬を使う治療もあるのですが(クエチアピン等)、それだと副作用的なもので気持ちが悪いという人がいるのと、僕のところに来ている患者さんは自分できちんと律することができる人が多いのでベンゾ系を使用することが多いです。この辺りは主治医の考えというのもありますが、患者さんがどこまでルールを守れるかによって変わってくると思います。

・ラポールの形成
前期から中期、後期に向けてラポール(信頼関係)の形成をすることが大事です。

・外来以外の場
あとは外来以外の場を検討するのがすごく大事です。アルコール依存症の場合だと自助団体に参加するのが有効というエビデンスが出ていますので、自助団体を積極的に勧める重要だと思います。

<中期> 

中期になってくると薬の継続をしながら個別の課題対策をします。
アルコールをやめることでこれまで隠れていた問題が出てきます。お酒で見えないようにしていた夫婦関係の問題が出てくるといったことです。どうしましょうね、という話をしたりします。人と話すのが苦手という人もいますので、外来を通じて対人関係に慣れてもらうこともします。

通院し続ける場合は自立支援、障害者手帳、障害者年金の申請をしたりします。
中期に入っても自助団体やデイケアプログラムが必要な人には適宜勧めます。

3ヶ月、6ヶ月お酒をやめて中期に入っている人は結構安心して見ていられるという気もします。
とはいえお酒をやめましょうと言ってくれる人は周囲になかなかいませんし、誘惑も多いです。日本人はお酒に対して緩いので「お前はもう飲んじゃだめだ」と怒ってくれる人はあまりいません。ですので通院をしながら「やっぱり飲んじゃダメですよね」と確認し続けることには僕は結構意義があると思います。

<後期> 

後期に入ると薬の減薬・終了をし、自ら対応・学習・納得をしてもらうということになります。手帳や年金等は中止を検討します。

アルコール依存の場合はうつ病に発展することも多いので、様子を見ながら治療をしていきます。再飲酒は本当に多いので、患者さんが「もう大丈夫です」という場合でもちゃんと通院してくださいと言いますし、1年、2年経っていても、2、3ヶ月に1度で良いので来てくださいよと言います。ギャンブル依存の場合もそうです。

ギャンブル依存は初期の段階でお金のルールを決めてしまうので、奥さんが財布のヒモを握っていればそんなにギャンブルに戻ることはないかなと思います。

<コロナの影響下でも飲み歩いてしまう>

今はコロナの影響下なのでお酒やギャンブルをやめやすい環境なのかなと思います。
ただこのような状況でも飲み歩いてしまう人やギャンブルに行ってしまう人がいて、その場合は罪悪感から外来ではなかなか告白しにくいものです。そこら辺も「別に良いですよ」と言いながら、どうやったらやめられるのでしょうねということを語ったりするという感じです。

究極的に言えばお酒を飲まなければ良いだけの話なのですが、どうして飲んでしまうのか、そこら辺の不安や孤独感を共有しながら治療に結びつけていくことが重要なのかなと思います。せっかく積み上げた信頼がたった1杯のビールで崩れてしまうのもアルコール依存症の特徴なので、なかなか難しい病気だなと思います。

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【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3版

#アルコール依存 #ギャンブル依存 #依存症の治療